中国の香の歴史
中国の香の歴史
中国の香の歴史については、様々な文献に記された記録は比較的複雑で、様々な見解があります。古代中国は長い歴史を誇ります。現在、最も広く認知されているのは、中国五千年史（Wikipediaより）です。私が個人的に信奉している香の歴史は、主に以下の三つの段階に分けられます。
1.お香の起源： 夏、商、周の王朝（夏王朝：紀元前2070年頃～紀元前1600年頃。商王朝：紀元前1600年頃～紀元前1046年頃。周王朝：紀元前1046年頃～紀元前256年）
2.お香の発展： 漢王朝（紀元前202年～220年、合計405年間）
3.お香の人気度： 隋唐時代（隋唐時代、581-907年。総称して隋王朝（581-618年）と唐王朝（618-907年）とも呼ばれ、中国史上最も勢力の強かった時代の一つでもある）
1.お香の起源：
香の歴史は古く、5000年前の神農帝の時代にまで遡ります。人々は病魔を防ぎ、穢れを避けるため、薬として植物を採取していました。当時の人々は、植物が発する香りを非常に重視していました。花が咲き誇る香りを嗅ぐと、人々はその香りに美しさと喜びを感じました。人々は花、果実、樹脂などの香料を神に捧げ、香りが溢れ、信仰の境地を極めました。そのため、古代において、これらの香料は神への崇拝、供物、心身の浄化、葬儀などに用いられました。
夏、商、周の時代（夏：紀元前2070年頃～紀元前1600年頃、商：紀元前1600年頃～紀元前1046年頃、周：紀元前1046年頃～紀元前256年頃）には、香の役割はより特異なものとなり、主に祭祀に用いられました。「周の文王は火を灯して神々に供物を捧げ、立ち上る煙を通して神々と交信した」という記述は、中国の古典『詩経』（《詩経》）に記されており、この種の供儀は周の文王の時代に始まったことを示しています。具体的な供儀の方法は、動物の死骸と玉糸を薪の上に置き、薪に火を灯して煙を立ち上らせるというもので、天と神々への供物を捧げるという意味を持っていました。中国の古典『周礼』には、「薪の上に動物の供儀、玉の毘、玉の瓔珞、絹の絲などを置き、王は薪に火を灯し、煙を高く天に昇らせ、神々に供儀の香りを嗅がせた」と記されています。この時代の供儀とは、まず火を焚いて煙を上げ、その煙で神々を祀ることだったことがわかります。これは現代中国で言う「焼香」です。この時代の香には、次のような特徴がありました。第一に、香の材料が原始的であったこと、第二に、火は道具を使わずに自然に起こされたこと、第三に、供儀のみに用いられ、まだ日常生活に馴染んでいなかったことです。
2.お香の発展
香の歴史における第二期は、中国史における漢代（紀元前202年～紀元前220年、計405年間）であり、導入期とも言える。漢代の武帝は、中国の香業の発展において特別な意義を持っていた。
漢王朝の武帝（第七代皇帝）は、神々を特に深く尊敬していました。彼は不老不死という目標（古代中国には不老不死に関する神秘的な伝説があります）を達成するため、それぞれの神々に供物を捧げ、神の加護を得て不老不死を達成しました。この武帝の行為によって、香を焚く供儀という伝統が人々に広く知られるようになりました。
漢の武帝の時代には、お香は次第に実用的なものになっていきました。例えば、新しい土地を購入する際にお香を焚いて神に祈ったり、妻や側室（側室とは、本来の妻以外の妻の呼称）を娶る際にも、神に加護を祈ってお香を焚いたりしました。本来の妻は一人しか持つことができませんが、側室は何人でも持つことができます。伝説によると、古代中国の皇帝は皆、後宮に数百、あるいは数千人の側室を置いており、王室も側室と呼んでいました。古代中国には一夫多妻の伝統があり、貧乏な人も裕福な人も側室を持つという伝統がありました。これにより、お香は皇帝だけが天に供物を捧げるために使うという伝統が破られ、日常的に使われるようになりました。
漢の武帝は領土を大幅に拡大しました。この時期、西域の香辛料が中国にもたらされました。また、漢の武帝はかつてパルティア王国（現在のイラン）に使節を派遣しました。『漢書』（中国漢王朝の王族の歴史書）には、「パルティア王国（現在のイラン）は洛陽から2万5千里（当時の古代中国の「1マイル」は現代の約415.8メートルに相当）離れており、樹皮には独特の香りがあり、この樹皮を燃やして発生する煙は神々と交信できる」と記されています。樹皮の樹脂は香辛料として使われています。西域からの香料の供給が豊富だったため、漢の武帝の時代には香が特に盛んになり、後世の非公式な史料にも繰り返し記録されています。例えば、長安の疫病を鎮めるために「月枝神香」を焚いたこと（『香乘』巻八）、太后（古代中国神話で不老不死の薬を司る神）「漢武蓋璜」を祀るために「百和香」を焚いたこと、東方朔が夢の中で李夫人に会うために「夢抱香」を焚いたこと、李夫人を蘇らせるために「還香」を焚いたことなどが挙げられます。この伝説は日本にも伝わっています（『源氏物語』第四十八巻）。
香の発展に伴い、香具も発展しました。ほどなくして、中国史上初の香炉「博山香炉」が発明されました。それ以来、香製品と香炉の融合により、中国の香は新たな段階へと進みました。
しかし、漢の武帝の時代に西域から香料がもたらされてから、漢末期の三国志の覇権争いの時代に至るまで、この300年以上の間、香の使用は宮殿と上流貴族に限られており、庶民の家庭に香が持ち込まれることは極めて稀で、異例なことでした。宮殿でさえ、香を焚くことは依然として贅沢な行為でした。
3.お香の人気
お香が流行したのは、隋唐の時代以降です（隋唐の時代は581年から907年までで、総称して隋代（581年から618年）、唐代（618年から907年）と呼ばれ、中国史上最も勢力の強かった時代のひとつでもあります）。
人気の理由は 2 つあります。
まず、「西洋香」（現在のイランにあたるパルティア王国など）が「南香」（中国の広東省、広西チワン族自治区、海南省など、中国の地理的に南部に位置することから「南香」と呼ばれる）に取って代わられました。南香の大量流入により香の価格が下がり、広く普及しました。
第二に、六朝時代以降、仏教と道教は大きく発展し、交互に国教の最高位を獲得しました。どちらの宗教も香の使用を推奨していたため、信者は次々とそれに倣い、香の使用が広まり、香を焚くことが盛んになりました。しかし、当時、儒教は仏教や道教と依然として対立しており、伝統的な学者たちは仏教、特に仏教に抵抗し、香の隆盛はやや衰退しました。
宋代（960年～1279年、北宋代（960年～1127年）と南宋代（1127年～1279年）の二期に分かれ、計18人の皇帝が在位し、319年間続いた）には、儒教、仏教、道教が融合し、香を焚く風習が皆で一致して提唱され、そこから香道が生まれました。
香を焚くことと美しさは一体となり、香を詠んだ詩は数多く残されています。北宋の陳毓宜による「香を焚く」を例に挙げましょう。
明らかに静的であり、空間が消えます。
「明るい窓は静かな本を広げ、静かに座っていると埃が消える。」（この2つの文は静かな環境を表しています。明るい窓の隣には瞑想の本が置かれており、詩人はそこに静かに座り、世間の雑念や心配事を消し去っています。）
つまり、これは無制限です。
「この煙の中には、無限の意味が込められようとしている。」（詩人は、香を焚くことで生じる煙の中に、無限の思いや考えを込めます。ここでは、香を焚くことで生じる煙が、詩人の感情や考えを運ぶ媒体となります。）
当時戒定慧、妙供均人天。
「その時、彼は規律正しく、穏やかで賢明であり、人と天に素晴らしい供物を捧げました。」（詩人は、過去の修行における規律、集中、そして知恵を回想しています。これらの修行によってもたらされた素晴らしい利益は、彼自身だけでなく、他者や世界にも利益をもたらします。）
私は不清です、今心は覚めています。
「さあ、友よ、私の心は今、澄み渡っている。」（詩人は、自分が純粋さの友になったかどうかを自問し、そして今、彼の心は澄み渡っている。これは、詩人が自身の修行の成果に対する自信と満足感を表現している。）
炉香袅孤碧、云缕霏数千。
「香炉の煙は孤独に青く、雲が千本散る」（香炉の中の煙草が丸まり、孤独な青を見せ、雲のような煙が千本散るかのように広がる。）
悠久は空を凌いで、缺はまた続く。
「煙はのんびりと空を漂い、風とともに去っていく。」（煙は霧のようにぼんやりと空を漂い、風とともに去っていく様子は、詩人のこの世のものとも思えない心境そのものです。）
世事はあり、凶暴性は変わらない。
「世の中の事物は移り変わり、自然は変わらない。」(世の中は常に変化しているが、詩人の心は修行によって一定であり、外的な事物によって変わることはない。)
これは水中月であり、波は波から離れています。
「水の中の月のように、波は円に還るであろう。」（最後の2つの文では、水の中の月を比喩として用い、世界は荒れ狂っていても、心が水のように穏やかであれば、内なる月（つまり、知恵と認識）は自然に完璧になることを示しています。）
この詩は、詩人が精神修行を通して内なる平安と世俗からの離脱を達成する能力を表現している。また、この詩は、私たちが世界の移り変わりに対処できるよう、内なる清らかさと安定を保つよう促す。この詩はまた、この時代以降、香を焚くことが伝統的な犠牲の儀式から、精神修行（瞑想、マインドフルネスなど）の過程における不可欠な手順へと徐々に進化し、精神修行の発展に貢献してきたことを証明している。
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